2011年1月6日木曜日

喰うことと、生きること 1

 久しぶりに新潟での飲み会に参加した。余は天下の逸民である。余は自らを天下のエリートであると確信する。ノーブレス・オブリージュを自らに課す武士道精神の最後の断片である。

 飲み会には不満がある。不満があるが、やっぱり行ってしまう。行ったとていつも内容は同じである。今何してる?の現状確認と住むところが近ければ今度、一緒に個別に飲みに行こうと、まずかなわぬ約束をし、酒がまわれば何べんも使い古した昔話にあだ花が咲き、ぐだぐだしているうちに二次会、三次会へとつまらぬ、くだらぬ、もりあがらぬの無限梯子である。メメント・モリはいずへ?余は昔話に興味など皆無である。余はイチローと同じ空気を吸うものである。過去の話は本当に心の底から興なく思うものである。しかし世には過去に生きねば生きられぬ者もいる。毎日の平凡な暮らしに、上司に頭をペコペコと下げ、後輩からは背を突っつかれ、眠い目をこすりながら、満員電車に揺られ、牛丼を駆け込み、また満員電車に揺られ、帰ってテレビをつけながらネットをする。その繰り返しの毎日、シシューポスの神話など露知らず、ダス=マンは今日も浅い眠りに就くのである。生き甲斐なき人生のなんともふがいなきことよ。仲良きことはよきことかな。武者小路実篤かな。教養なき人間の一生、すべてこれに足れり。

 しかし、そんなことをいったとて、余はまた今年も飲み会に出席したのである。毎年来ていたあいつの姿も今日はみえず、遂に余はこの中で唯一の皆勤賞という余にとってはじつに不名誉な賞を誰も知らず、こんなことを考えているのは余ひとりのみなれば、ひっそりと受賞した。会費は4000円なり。2次会はしっかりと断ろう!と勝間和代をしっかり読んでいたのにもかかわらず、先輩からおまえは金はらわなくていいからと言われたのと、先輩諸氏らの圧力に負けて、f××kつまらない2次会にまで出る始末、金は要らないといった先輩からは、飲み終了後に、伝票を見て、じゃあ、一人2000円で!という締めの声を聴き、空気を読んで2000円を財布からだし、先輩に渡そうとすると、いや、お前はいいよ。という言葉の期待もむなしく、まもなく、あいよ!と2000円は手元から抜き取られ始末書の両津。えっ!えっ!ドッキリ!!これってどっきりカメラ、ビックリドンキー?!新潟の野球部に吉本の伝統なく、先輩だから多めに払うという習慣もなく、余的にはあった方がいいと思うのだが、いかがかしらん、先輩が多めに、というか全額払う心持ち、おとこの粋を見せてもらいたかったけちんぼけんちゃんなのであります。かくして余の6000円は虚空に消えた。6000円とは一日の余のバイト料である。6000円は魔法では出てこない。余はお金の重さ、尊さを肌で知るものである。これほどまでにいたく身にしみて知るものである。コンクリートの駐車場で鬼ごっこをしていて、膝小僧をがっざりすりむいた日の、その夜のお風呂に入る時ぐらい沁みて沁みて知るものである。6000円もあれば本が買えた。おいしいお菓子もスキーにも行けた。画材も粘土もフィルムも買えた。おぉ、素晴らしき無駄ずかいよ!ミランダよ!シェークスピアよ!有り金は露と消え、帰るタクシー代も消えた。道路には誰もいない。寒夜の新潟を独り口ずさみながら家路に着いた。あったかい布団でねむるんだろな。と人間に生まれた喜びと、うまいものが、酒が食えた喜びと、五体満足で、待っててくれる家族がいる家がある幸せを噛みしめながら。

 もう飲み会なんて3年はいかなくていい。そういいきかせて皆勤賞を獲った。今年こそはいかないぞ!といいながらまた行ってしまう人間ってなんだろう?この業、わかっちゃいるけどやめられない。

 自分がいない時に限って、その飲み会が面白いのではないかという不安、自分がいない時に限って、高校の時好きだったクラスの違うあの娘がくるのではというまず間違いなく外れる予感、やれねぇ、女はただの豚だ、といったポルコ・ロッソ風にいえば、そんな女のいない飲み会はでてもなんにも面白くなく、かといって知性のない女にも興味がなく、完全にないとは言えないが、ポップティーンとかアゲハはやっぱり遊びになっちゃうかな、みたいな、だよねぇ、だよねぇ、ゆうっきゃないかもね、そんなときならね!みたいな、真のエロスは知性のある女にしかわからないんだよね、澁澤のあんちゃん、フランスのサルトルががっつりやっていたような、ハーヴァードやケンブリッジのような世界のウルトラ・エリートたちと杯を酌み交わしていきたい。ザッカ―バーグみたいなやつと世界のビジョンを共有したい。ハイとロウを融通無碍に行き来したい。本当にすごいやつは地元の飲み会で皆勤賞などまずとらないのだ!というかこないやつのほうが勝ってる感がでていた。類は友を呼ぶ!!!精進!精進!けっして仲間を切るのではない!次のステップに行くために薄くするのだ。旧交は温めればすぐに濃くなる。いざ!次のステージへ!

 …っと、こんなことをあの場にいたみんながみんな思ってるんだろうな。人間っておもしろっ!

0 件のコメント:

コメントを投稿